新海誠監督が初期作品で一貫して追求した「過剰な演技を排したリアルな息遣い」は、当時のキャスティングに色濃く反映されています。アニメ専門の声優だけでなく、実写映画や舞台で活躍する俳優陣を大胆に抜擢したことで、唯一無二の透明感あふれる世界観が構築されました。
遠野貴樹 声優 水橋研二
第1話「桜花抄」から第3話「秒速5センチメートル」まで主人公の青年期・大人時代を演じたのは、映画『月光の囁き』などで高い評価を得ていた実力派俳優の水橋研二です。思春期特有の孤独感や、拭いきれない喪失感を抱えたモノローグは、作品のトーンを決定づけました。水橋研二は現在も映画やテレビドラマ、舞台を中心にバイプレイヤーとして第一線で精力的な俳優活動を続けています。
篠原明里 声優 近藤好美 / 尾上綾華
第1話のヒロイン・篠原明里(中学生時代)の声を担当したのは近藤好美です。あどけなさと切なさを同居させた声の演技は、遠野貴樹の心に刻まれる絶対的な存在感を生み出しました。また、大人になった第3話の明里役はモデル・俳優の尾上綾華が担当し、時の流れに伴う精神的な成熟を巧みに表現しました。近藤好美は本作出演後、学業や私生活の節目を経て表舞台から距離を置いていますが、その澄んだ声の記憶はファンの間で語り継がれています。
澄田花苗 声優 花村怜美
第2話「コスモナウト」の語り手であり、貴樹に報われない片思いを寄せる澄田花苗役を演じたのは花村怜美です。実写子役出身でありながら声優としても高い実力を誇り、波打ち際で揺れる少女の痛切な心理を等身大の演技で見事に表現しました。花村怜美はその後も声優・俳優・ナレーターとして幅広くキャリアを積み重ね、確固たる地位を築いています。