過去20年間で、多発性骨髄腫の治療体系は世界で最も劇的な進展を遂げた分野の一つです。従来の殺細胞性抗がん剤主体の時代から、がん細胞をピンポイントで攻撃する多角的なアプローチへと移行しています。
1. 4剤併用療法(Quadruplet Regimen)の標準化
抗CD38モノクローナル抗体(ダラツムマブ等)、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ等)、免疫調節薬(レナリドミド等)、デキサメタゾンを組み合わせた初期導入療法が定着し、診断直後から微小残存病変(MRD)を陰性化させる確率が飛躍的に向上しました。
2. 自家造血幹細胞移植の安全性向上
65〜70歳以下の適応患者において、寛解導入後に大量の抗がん剤を投与し、あらかじめ採取した自身の正常な幹細胞を移植する治療法です。支持療法の進歩により移植関連死亡率は1%未満へと激減し、佐野史郎さんや岸博幸さんのように早期の社会復帰が可能になっています。
3. 再発・難治例への切り札:CAR-T細胞療法と二重特異性抗体
複数回の再発を経験した患者に対しても、自身のT細胞を遺伝子改変して骨髄腫細胞を攻撃させる「CAR-T細胞療法(シルタカブタゲン オートルユーセル等)」や、骨髄腫細胞とT細胞を直接結びつける「二重特異性抗体薬(テクリスタマブ等)」が保険適用され、劇的な奏効率を叩き出しています。