「足の人差し指が長いと親より出世する」という吉兆と、「親の死に目に会えない」という凶兆。一見すると正反対に見える2つの伝承ですが、民俗学や家族社会学の文脈を紐解くと、まったく同一の社会的背景から派生した言葉であることが分かります。
かつての日本社会において、生まれ育った村や家業にとどまらず、遠く離れた都市部や他国へ出て身を立てることは「立身出世」の象徴でした。地方から江戸や大阪などの大都市へ出て自立し、親の世代を超える成功を収める者は、地理的な距離や当時の交通網の制約から、故郷に残した親の臨終に立ち会うことが現実的に困難でした。
つまり、「親元を離れて遠くで活躍する=出世する」ことと、「物理的距離ゆえに親の臨終に駆けつけられない=死に目に会えない」ことは、ひとつの現象の表裏に過ぎません。親指を「親」、人差し指を「子」に見立て、親指より人差し指が前に出ている(親を追い越している)足の形状になぞらえて、親元を飛び出して大成する子どもの姿を投影した比喩表現が民俗伝承として定着しました。
SNSやネット掲示板の投稿でも、「祖母に親不孝になると言われて長年気にしていたが、歴史的な意味を知って安心した」「仕事で海外駐在や起業をしている友人にギリシャ型が多い」といった声が散見されます。迷信を文字通りに受け取って思い悩む必要は一切なく、独立心を持って自分の人生を力強く切り拓く姿勢への肯定的なエールとして捉えるのが自然です。