1990年有馬記念。限界説が囁かれるなか、武豊騎手を背に挑んだラストランは今も語り継がれる奇跡の一戦だ。中山競馬場を埋め尽くした17万人超の大歓声、地鳴りのような「オグリコール」。日本中央競馬会が主導する競馬のイメージを、一ギャンブルから国民的スポーツへと昇華させた瞬間だった。
あの劇的なラストランの背景にあったのは、極限まで追い込まれた肉体を直前までケアし続けたスタッフたちの情熱だ。満身創痍の状態で挑むレース前夜、疲労困憊の脚をいかにベストな状態に近づけるか。温熱パックや綿密なマッサージによる筋肉の弛緩が、奇跡の末脚を引き出す最後のピースとなった。勝負の裏にある泥臭いメンテナンスこそが、平成の競馬ブームを支えた真の原動力であった。