『Wake Me Up』がリリースされた直後、世界中のリスナーの間で「この圧倒的な歌声を響かせているボーカルは誰なのか?」という疑問が急速に広がりました。多くのEDMトラックでは客演シンガーの名前がタイトルに併記されますが、本曲の公式クレジットはシンプルに「Avicii」単独名義として打ち出されていたためです。
魂を揺さぶるハスキーで温かみのある歌声を担当したのは、アメリカのシンガーソングライターであるアロー・ブラック(Aloe Blacc)です。彼はすでに『I Need a Dollar』などのヒットでソウル・R&B界隈で高い評価を得ていましたが、ダンスミュージックの世界隈ではまだ広く知られた存在ではありませんでした。
制作当時、マイク・アインジガーから「面白いプロジェクトがある」とスタジオに招かれたアロー・ブラックは、その場でアヴィーチーが奏でるコード進行とアインジガーのアコースティックギターに触れ、強いインスピレーションを受けました。彼はスイスのジュネーブからロサンゼルスへ向かう長時間のフライト中にノートに書き留めていたフレーズを取り出し、わずか数時間の即興セッションでメロディと歌詞を完成させたのです。
後にアロー・ブラックは当時のインタビューで、「ティム(アヴィーチー)は曲の骨組みを聴いた瞬間、即座に完成形のアレンジを脳内で描き出していた。彼の頭の中には、すでにジャンルを超越したスタジアム・アンセムの完成図が存在していた」と証言しています。