洗濯機に入れる前、あるいは洗面所で「とりあえず水で濡らして揉み洗いをする」という行動は、泥汚れを落とす上では逆効果になります。その理由は、汚れの性質と繊維構造の力学関係にあります。
衣類に付着する汚れは、大きく分けて以下の3種類が存在します。
- 水溶性汚れ:汗、果汁、醤油など(水に溶ける)
- 油溶性汚れ:皮脂、ファンデーション、機械油など(油や有機溶剤、界面活性剤に溶ける)
- 不溶性汚れ:泥、砂、スス、金属粉など(水にも油にも一切溶けない)
泥の正体は、ケイ素やアルミニウムなどの微細な鉱物粒子(土・砂・粘土)です。泥で汚れた布をいきなり水で濡らすと、毛細管現象によって微細な泥粒子が水の流れとともに繊維の網目(ミクロの隙間)の最深部まで引きずり込まれます。その状態でブラシでゴシゴシ擦ると、粒子が繊維の隙間に楔(くさび)のように強く押し込まれ、物理的にロックされてしまいます。
さらに、スポーツのユニフォームや靴下の場合、泥粒子だけでなく「皮脂」や「汗」が複雑に絡み合った複合汚れを形成しています。皮脂が糊(のり)のような役目を果たして泥粒子を繊維に強固に接着させてしまうため、通常の洗濯洗剤を溶かした水で洗うだけでは、表面の油分がわずかに落ちるだけで泥粒子そのものは繊維の奥に留まり続けることになります。