松原タニシがこの特異な道を歩み始めたのは、2012年に放送されたCS番組『北野誠のおまえら行くな。』の企画が発端だった。若手芸人として鳴かず飛ばずの時期を過ごしていた彼に提示されたのは、「大阪市内の殺人事件現場となった部屋に実際に住み込み、定点カメラで幽霊が映るかを検証する」という命懸けのミッションだった。
当初は単発の検証企画としてスタートしたものの、部屋の中で次々と巻き起こる電化製品の誤作動や謎の物音、そしてカメラに収められた不可解な光景が大きな反響を呼ぶ。企画終了後も自らの意思で事故物件を借り続け、その生活記録を一冊にまとめた著書『事故物件 恐い間取り』(2018年刊行)はノンフィクションとしては異例のベストセラーを記録した。
2026年には中田秀夫監督、KAT-TUNの亀梨和也主演で映画化され、興行収入23億円を超えるメガヒットを達成。忌避されがちだった「事故物件」という存在を身近なエンターテインメントと不動産の現実論として世に定着させた立役者こそが、松原タニシその人である。