中東情勢の影響は、戦場から遠く離れた日本の食卓にも及んでいる。2026年末以降、イエメンのフーシ派が紅海を航行する商船への攻撃を開始して以来、世界の海運大手はスエズ運河を避け、喜望峰経由の迂回を余儀なくされた。アジアと欧州を結ぶ最短ルートが事実上封鎖されたことで、輸送日数は約10〜14日延び、コンテナ運賃は2026年初頭に前年比で一時300%超まで高騰。2026年に入っても完全な正常化には至っていない。
より深刻なのは、原油価格への波及だ。中東リスクの高まりを受けて、北海ブレント原油は1バレルあたり85〜95ドル台での高止まりが続いている。日本の原油輸入の約9割は中東依存であり、イラン・イスラエル間の緊張がさらに悪化し、ホルムズ海峡の安全が脅かされれば、1バレル120ドル超への急騰も現実味を帯びるとの試算を、国際エネルギー機関(IEA)系の専門家は公表している。ガソリン価格、電気・ガス料金、食品輸送コスト、あらゆる物価に跳ね返る構図だ。
さらに、フーシ派の攻撃は海運保険料を引き上げ、日本の製造業が輸入する部材や輸出製品の納期にも影響を及ぼしている。物流業界の関係者からは「紅海リスクの長期化は、日本経済にとって実質的な『物流インフレ』を常態化させる」との声が聞かれる。中東の戦火は、もはや「対岸の火事」ではない。