九州各地のお雑煮に入っている具材には、単なる味の調和にとどまらない、深い祈りと歴史的ストーリーが込められています。
福岡のお正月には欠かせない「かつお菜」は、アブラナ科の葉野菜で、出汁をとらなくても「鰹節のような濃厚な旨味が出る」ことからその名がつきました。漢字で「勝男菜」と書くことから、武家社会で「勝負に勝つ」「男児の健やかな成長」を願う縁起物として珍重されてきた歴史があります。
一方、長崎県島原地方に伝わる「具雑煮」は、1637年に勃発した「島原の乱」において、天草四郎率いる一揆軍が原城に籠城した際、兵糧として集めた餅に山野の動植物や海産物を一切合切入れて煮込み、3ヶ月にわたって戦い抜いた故事が起源とされています。穴子、鶏肉、ごぼう、レンコン、凍豆腐など10種類以上の具材が土鍋で煮込まれる具雑煮は、今日では郷土料理として年間を通じて愛される名物となりました。
また、鹿児島をはじめとする南九州で見られる「焼きエビだし」は、秋に獲れた新鮮なエビを串に刺して炭火でじっくり焼き、乾燥させたものを使用します。腰が曲がるまで長生きできるようにという長寿祈願と、海老の赤色による魔除けの意味が込められています。