公的データや施策の成果発表がどれほど華々しくとも、現場の肉声はときに冷徹なコントラストを描き出します。SNSやネット上の掲示板、転職コミュニティを定点観測すると、保育士待遇改善に対するネットの反応には生々しい葛藤が渦巻いています。
大手SNSで公開された「20代後半・私立認可園・勤続6年目」のリアルな給与明細では、額面26万4,000円、各種控除後の振込額が20万8,000円と記されていました。本人は手記のようにこう綴っています。「改善加算のおかげで手取り20万円は超えるようになった。でも、毎日18時半まで園児を見て、帰宅後に連絡帳の入力と指導案作成、行事の衣装作りで深夜1時。時給に換算したらコンビニの夜勤アルバイトの方がはるかに高い」。
都内私立園で主任を務める30代保育士への直接取材でも、同様の疲弊が語られました。「月額手当が数万円増えたことは純粋にありがたいです。ですが、現場が本当に求めているのは手当の上積みではなく、有休を気兼ねなく取れるだけの人員配置と、持ち帰り仕事をゼロにするDX環境です。心身を削って手にする手取り23万円は、命の責任に対して依然として安すぎると感じてしまいます」。
表面的な給与総額は上がったものの、「責任の重さ」「サービス残業の常態化」「精神的摩耗」という現場の体感コストに対して、報酬の伸びが追いついていないという認識のミスマッチが、現場の閉塞感を生み出し続けています。