旅客機が水平飛行へ移行する巡航高度(約1万〜1万2,000メートル)は、地球の大気構造における劇的な転換点に位置しています。地表から対流圏界面(Tropopause)と呼ばれる境界を越えると、大気は成層圏へと突入します。雲の上の景色が常に穏やかに見える最大の理由は、成層圏では高度が上がるにつれて気温が上昇するため対流活動が起きず、雨や雪をもたらす気象現象がほぼ存在しないためです。
地上付近の気温が20℃の快晴であっても、高度1万メートルの外気温度はマイナス50℃〜マイナス55℃という極寒の世界です。大気圧は地上の約4分の1(約250hPa)まで低下し、酸素濃度も極めて希薄になります。過酷を極めるこの層を旅客機が選んで飛行するのは、空気抵抗を極限まで減らして燃料消費を抑えつつ、雷雲や激しい上昇気流を回避して安全な巡航を維持するという合理的な航空工学的判断に基づいています。
成層圏の上層、高度約100キロメートルに位置する大気と宇宙の境界(カーマン・ライン)に向かうにつれて、空の色は水色から濃紺、そして宇宙の漆黒へと変化していきます。昼間でも窓の上部に目を凝らすと、大気の散乱が弱まることで深みを増したインディゴブルーのグラデーションが確認でき、地球の大気層がいかに薄いベールであるかを実感できます。