本吉原駅のホームに降り立つと、まず鼻腔をくすぐる独特の紙の匂いと、規則的に響く工場の稼働音が耳に届きます。木造の柱や屋根、長い年月風雨に晒されて深い飴色に変化した木製ベンチ、そしてホームを結ぶ古風な構内踏切など、昭和の映画セットそのままの景色が眼前に広がります。
この完成された空気感ゆえに、映像関係者からの評価は絶大です。過去には数々のドラマや映画、ミュージックビデオ、CMのロケ地として採用されてきました。時代設定が昭和や平成初期の作品はもちろん、「登場人物の心象風景を象徴する静謐な駅」として、数々の名シーンが生み出されています。
現地の木造駅舎は装飾過多ではなく、生活と産業の道具として使い込まれてきた実用的な美しさを湛えています。作為的なレトロ風施設では決して再現できない「本物の経年変化」が、クリエイターや旅行者の心を捉えて離しません。