『考えるカラス』の魅力は、その徹底的に削ぎ落とされた映像美学と、静謐なトーンを崩さないキャスティングにあります。派手な効果音や大げさなリアクションを排し、純粋な「現象」そのものに視線を集中させる演出設計が見事です。
番組内で特に印象的なコーナー「考える練習」を担当するのが女優の市川実日子さんです。彼女は日常にある身近な道具を使い、不思議な現象を実演します。過度な説明を加えず、視聴者と同じ目線で現象を見つめ、疑問の引き金を引いた直後に佇むその佇まいは、観る者に「違和感を観察する楽しさ」を直感させます。
一方、番組全体の進行および実験コーナーのナビゲートを務めるのが蒼井優さんです。彼女が担当するナレーションは、感情を排した客観的でフラットな語り口が特徴的です。また、彼女自身が「蒼井エリカ」というキャラクターとして登場し、仮説を立てて検証を繰り返すコーナーでは、試行錯誤の過程が克明に描かれます。
番組タイトルの由来となっているのは、イソップ寓話「カラスと水差し」です。細い水差しの底にある水を飲むため、小石を一つずつ落として水面を上昇させたカラスのように、自らの知恵と試行錯誤で課題を解決する存在を象徴しています。映像制作集団「ユーフラテス」による計算し尽くされたカメラワークと構図が、この知的な世界観を完璧に補強しています。