テレビ番組の合間や街頭ビジョンから流れてくるCMソング曲名も、人々の記憶に強く引っかかる代表格です。CM音楽は、消費者の購買意欲や企業イメージを高めるために、わずか15秒の枠内で最も感情を揺さぶる「フック」が凝縮されています。
CMで使用される楽曲を特定したい場合、もっとも確実なのは企業名や商品名に「CM曲」「BGM」を掛け合わせて検索することですが、大手広告代理店や放送局の発表資料を確認すると、CM音楽には大きく分けて3つのパターンが存在します。
第1に、洋楽ヒット曲特定が求められるケースです。世界的な有名クラシックや、80年代〜2000年代のビリー・ジョエル、クイーン、アース・ウインド&ファイアーといった洋楽スタンダードナンバーが、リマスターや現代的なアレンジを施されて採用される事例が相次いでいます。第2に、人気アーティストがその広告のために書き下ろした未発表のタイアップ新曲です。この場合、CM放映開始から正式なシングルリリースまで数週間のタイムラグがあり、検索しても配信リンクが見当たらない事態が起こります。第3に、広告制作会社が専属作曲家に依頼して制作した「CMオリジナル音源(ライブラリ音源)」であり、そもそも一般流通していない音源であるケースです。
また、ふとした拍子に特定のメロディが脳内で延々と繰り返される現象は、認知科学・音楽心理学の領域で「インボランタリー・ミュージカル・イメージ(INMI)」、通称「イヤーワーム(earworm)」として研究されています。人間の脳は、未完成な情報や中途半端に途切れた刺激に対して強い緊張を抱き、それを完結させようとする「ツァイガルニク効果」を持っています。つまり、15秒の断片だけを聴かされた脳は、その前後を補完しようとして無意識に旋律を反復再生し続けるのです。この頭から離れない曲の正体を物理的に特定し、楽曲のイントロからアウトロまでを一度フルコーラスで鑑賞し切ることは、脳に「完結シグナル」を送り、精神的なモヤモヤを解消する科学的なアプローチでもあります。