二月堂を訪れた参拝者が最も息をのむ瞬間は、斜面にせり出すように組まれた「懸造(かけづくり)」の舞台に立った時です。京都の清水寺本堂と同じ建築技法で建てられたこの舞台からは、眼下に広がる奈良盆地と大仏殿の巨大な大屋根を一望できます。
時間帯によって劇的に表情を変える景観は、二月堂が誇る屈指の見どころです。晴天の昼間には遠く生駒山系の稜線までくっきりと見渡せ、夕刻になると空が茜色から深い藍色へと移り変わる壮麗な夕景が広がります。日が完全に沈むと、舞台の欄干に並ぶ吊り灯籠に明かりが灯り、回廊全体が柔らかな光に包まれる幻想的な夜景ライトアップへと姿を変えます。
東大寺境内の多くの建造物が夕方に門を閉ざす中、東大寺二月堂の拝観時間は舞台・回廊を含めて終日(24時間)開放されています。夜間や早朝には観光地の喧騒が嘘のように消え去り、静まり返った古都の夜景と澄んだ空気が訪れる者の心を洗い流します。早朝の澄み切った朝靄に包まれる時間帯や、月明かりが石段を照らす深夜の参拝は、知る人ぞ知る極上の体験となっています。