疲労困憊で布団に入ったにもかかわらず、頭の中だけが異常にクリアになってしまう現象には、明確な生理学的理由が存在します。その主犯が自律神経の乱れによる交感神経の過覚醒と深部体温の低下不全です。
人間が自然な眠気に誘われる際、体内では血圧や心拍数を下げる副交感神経が優位になり、手足の末梢血管から熱を放散して身体の中心温度(深部体温)が急激に下がっていきます。同時に、脳の松果体から催眠ホルモンであるメラトニンが分泌されることで、スムーズな入眠がもたらされます。
しかし、直前までの仕事のプレッシャーや対人関係のストレス、あるいは「早く寝なければならない」という焦りがあると、交感神経が刺激されてアドレナリンやコルチゾールが血中に放出されます。心理学で指摘される「認知的覚醒(Cognitive Arousal)」が起き、脳が緊急警戒モードに入ってしまうため、身体が眠りを拒絶してしまうのです。