『名探偵コナン』の放送が始まった1996年当時、高木刑事という設定は存在していませんでした。高木渉氏の本来のレギュラーポジションは、少年探偵団の切り込み隊長である小嶋元太役です。
転機となったのは、アニメ初期における事件現場のシーンでした。目暮警部が事件の状況を説明する際、聞き手となる部下が必要だったものの、台本上は単なる「警官A」や「刑事」という端役表記に過ぎませんでした。そこで現場のテスト中、目暮警部役の茶風林氏から「君、名前は?」と不意にアドリブで振られた高木渉氏が、咄嗟に「はい、高木です!」と自分自身の本名を返答したことがすべての始まりです。
この自然な掛け合いが現場のスタッフに受け入れられ、以降の現場でも便宜上「高木刑事」と呼ばれるようになりました。原作者の青山剛昌氏もこのユニークな経緯を面白がり、原作コミックスへ正式に「高木渉」という同姓同名のキャラクターとして逆輸入したのです。声優の本名がそのまま主要レギュラーキャラクターのフルネームになった事例は、日本のアニメ史上でも極めて稀なサクセスストーリーといえます。