ピンマイクが拾う小さな息遣い。原稿のめくれるかすかな摩擦音。糸永アナの真骨頂は、そうしたスタジオの生々しいノイズすらグルーヴに変えてしまう圧倒的な即興性にある。
ディレクターの指示通りに綺麗に進行するだけなら、最新の音声合成でも事足りる時代だ。だが、突発的なニュースが入った瞬間のわずかな沈黙、ゲストの突飛な発言に対するコンマ数秒の絶妙なリアクションは、彼女にしか作れない。用意された正解のコメントをなぞるのではなく、その場の空気を素手で掴み取るような潔さ。視聴者が求めているのは、完璧に整えられた台詞ではなく、迷いや驚きを共有できるリアルな人間なのだ。