中継現場から少し離れた避難エリアで、街頭モニターを見上げていた雄英高校の生徒たち。その中で、周囲の熱狂から完全に切り離され、絶望と覚悟の涙を流したのが緑谷出久と爆豪勝己の2人でした。
モニターを見つめる出久は、周囲の人々が歓声を上げる中で一人、口元を押さえ、嗚咽を漏らして崩れ落ちます。出久だけは知っていました。オールマイトの右腕から立ち上る煙が何を意味するのか、そして指差された「君」が特定の一人――すなわち自分自身であることを。
憧れ続け、背中を追いかけてきた偉大な師匠が、自分に力を授けたがゆえに力を失い、完全に現役を終えてしまったという痛切な喪失感。それと同時に、「今日この瞬間から、自分がこの社会を背負わなければならない」という底知れないプレッシャーが、16歳の少年の肩に一気にのしかかった瞬間でした。
一方、隣にいた爆豪勝己の反応も見逃せません。爆豪は出久がワン・フォー・オールの継承者である事実をまだ完全には知らされていなかったものの、研ぎ澄まされた直感で「オールマイトの異変」と「終わりの空気」を察知していました。なにより、「自分が敵連合に捕まったせいで、オールマイトに無理をさせ、引退に追い込んでしまった」という凄まじい罪悪感が、爆豪の心を苛みます。
歓喜に沸く群衆、使命の重さに泣き崩れる出久、そして悔恨の表情で唇を噛みしめる爆豪。この圧倒的な感情の対比こそが、神野の戦いを単なるバトルシーンから不朽の人間ドラマへと昇華させた要因です。