多くのリスナーを惹きつける最大の魅力は、『海の声』の歌詞の意味に込められた圧倒的な切なさにあります。CMの設定上、浦島太郎は竜宮城の乙姫(菜々緒)に恋焦がれていますが、住む世界が異なる二人は常に一緒にいることができません。スマートフォンや電波がない神話的な世界観の中で、彼は「自然現象すべてを通信手段に見立てる」という途方もないアプローチを試みます。
「空の声が聞きたくて」「風の声に耳すませ」「海の声が知りたくて」というフレーズは、科学的な通信が途絶えた場所でも、相手への想いを風や波に乗せて届けたいという純真無垢な祈りそのものです。メールやSNSで瞬時に繋がれる現代だからこそ、この「会えない時間の途方もない距離感」が聴く者の胸を強く締め付けます。
さらに歌詞終盤の「たとえ僕がおじいさんになっても ここにいる」という一節は、浦島太郎伝説の結末である「玉手箱を開けて老人になる運命」を自覚した上での覚悟を示唆しています。たとえ若さを失い、姿形が変わろうとも、乙姫を愛し続けるという永遠の誓いが、ひらがなやふりがなを追うだけでも情景が浮かぶ平易な日本語で表現されている点に、この楽曲の文学的真骨頂があります。