「実写版クレヨンしんちゃんが存在する」という言説の最大の根源は、2009年9月5日に全国東宝系で公開された映画『BALLAD 名もなき恋のうた』にあります。本作は、アニメ映画シリーズ第10作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』(2002年公開/原恵一監督)を原案として、『ALWAYS 三丁目の夕日』や『ゴジラ-1.0』で知られる山崎貴監督がメガホンをとった本格歴史劇です。
主演の戦国武将・井尻又兵衛役を草彅剛、彼と身分違いの恋に落ちる春日の国の姫・廉姫役を新垣結衣が熱演しました。原作アニメにおける「野原しんのすけ」に相当するタイムスリップした少年・川上真一役には、当時子役として頭角を現していた武井証が抜擢され、父親役を筒井道隆、母親役を夏川結衣が演じています。
なぜタイトルから「クレヨンしんちゃん」の名が外されたのかについて、当時の映画関係者や宣伝担当者はメディアの取材に対し、「アニメのギャグ要素をそのまま実写化するのではなく、原案が持つ普遍的な悲恋劇と家族の絆という人間ドラマを純粋な時代劇として昇華させるため」と明かしています。結果として興行収入18億1000万円を記録し、第33回日本アカデミー賞話題賞を受賞するなど、アニメ実写化の成功モデルとして高い評価を獲得しました。