閃輝暗点において臨床上最も警戒しなければならないのが、「ギザギザの光が見滅したにもかかわらず、その後に頭痛が一切起きないケース」です。
若い世代では、血管の拡張反応が微弱なために頭痛が起こらない良性の「片頭痛等価症(Migraine Aura without Headache)」であることも珍しくありません。しかし、40代・50代を過ぎてから人生で初めて閃輝暗点を経験し、頭痛を伴わない場合は構造的リスクが一気に跳ね上がります。
日本脳卒中学会のガイドラインや臨床統計でも指摘されている通り、後頭葉へ血液を送る椎骨脳底動脈系に動脈硬化や微小血栓が存在すると、一時的な脳血流低下によって閃輝暗点と全く同一の視覚症状が発生します。これは一過性脳虚血発作(TIA)や、すでに小さな脳梗塞(ラクナ梗塞など)を発症している危険信号に他なりません。
特に以下の兆候が1つでも当てはまる場合は、片頭痛と自己判断して放置することは厳禁です。
- これまで頭痛持ちではなかったのに、40歳を過ぎてから突然発症した。
- 光のギザギザが見えている最中、あるいは消失後に「ろれつが回らない」「言葉が出にくい」。
- 片側の手足に力が入らない、あるいはピリピリとしたしびれ・感覚麻痺がある。
- 閃輝暗点の持続時間が60分を超えて続く、または1日に何度も発作が頻発する。
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症・不整脈(心房細動)などの基礎疾患を抱えている。