のし餅とは、蒸したもち米をつきあげた後、熱いうちに麺棒や専用の板で均一の厚さ(約1.5cm〜2cm)に平たく伸ばした(伸した)大きな板状のお餅のことです。古くから東日本を中心とした地域で、年末年始の保存食および神仏への供え物として重宝されてきました。
語源におけるのし餅の由来と意味を探ると、動詞の「伸ばす(伸す)」から名付けられたとされています。「長寿を延ばす」「家の運気・繁栄を伸ばす」という縁起を担いだ言葉遊びが込められており、祝儀袋に添えられる「熨斗(のし)」と同様、めでたい事象を象徴する縁起物として親しまれてきた歴史的背景があります。
混同されやすいのがのし餅と切り餅の違いです。実質的な原材料や製法は同一ですが、流通形態と状態が異なります。
- のし餅:平たく伸ばした一枚板の大きな状態。家庭で好みのサイズに切り分ける必要がある生餅。
- 切り餅(角餅):のし餅を短冊状・長方形に切り分けた個々のピース。現代では個包装され、脱酸素剤が封入された市販品を指すことが多い。
また、のし餅と丸餅の関東・関西における文化的な違いも見逃せません。関西をはじめとする西日本では、手で一つずつ丸く成形した「丸餅」が主流です。「角を立てず円満に年を越す」という意味が込められています。対して江戸を中心とする東日本では、人口密集地で手早く大量に餅を供給する必要があった武家社会の合理性から、一気に伸ばして切り分けるのし餅(角餅)が定着しました。さらに江戸の武士道においては「丸める(懐柔される)」ことを嫌い、「敵をのす(打ち負かす)」に通じるのし餅を好んだという記録も残されています。
なお、餅の販売単位であるのし餅1升の重さは、精米時のもち米約1.4kg〜1.5kgを吸水させて蒸しあげ、つきあげることで、完成時の製品重量として約1.8kg〜2.0kgに達します。この1升ののし餅から、一般的な切り餅(約50g〜60g)がおよそ25枚〜35枚切り出せます。