日本橋ライフサイエンス拠点の注目理由を紐解く際、単なる「立地の良さ」だけで片付けることはできません。最大の原動力となっているのは、三井不動産と産学連携組織「LINK-J(一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン)」が二人三脚で構築してきた、業界特化型の人的ネットワークと情報集積力にあります。
江戸期からの製薬企業集積地という歴史的文脈を受け継ぎつつ、三井不動産が推進する「日本橋再生計画」の戦略的柱として2010年代半ばに本格始動したこの構想は、現在では国内外の産官学を巻き込むメガクラスターへと結実しました。施設内では年間に数百回規模のシンポジウム、ネットワーキングイベント、ピッチコンテストが開催され、バイオコミュニティにおける「あそこに行けば誰かに会える、最新情報が手に入る」という確固たるデファクトスタンダードを勝ち取っています。
現場を取材すると、スタートアップの創業者が「エレベーターホールやラウンジでの何気ない立ち話から、大手製薬企業との共同研究やシード資金の調達が決まった」と証言する場面に幾度となく遭遇します。ハードウェアとしてのビルを提供するだけでなく、コーディネーターが常駐して人と企業を能動的に結びつけるソフト面の支援体制こそが、国内外の先端医療プレイヤーを引き寄せてやまない決定的な理由です。