「買ってから5年間、一度も開けたことがありませんでした」
都内のマンションに暮らす40代の会社員男性は、絶句しながらそう語った。彼のエアコンからは、異音とともに酸っぱいような悪臭が吹き出していた。原因は皮肉にも、購入時に数万円のプレミアムを払って選んだ「自動お掃除機能」への絶対的な信頼だった。
多くの人が勘違いしている。あのロボットアームが掻き集めるのは、あくまで乾燥した粗いホコリの表面だけだ。リビングの油煙や微粒子と混ざり合ってネットにこびりついたベタつきは、プラスチックの小さなブラシではびくともしない。ダストボックスがいっぱいになれば、溢れたゴミはフィルターの端から内部へと押し込まれる。メーカー各社が取扱説明書で「定期的な手動メンテナンス」を明記しているにもかかわらず、販売時のキャッチコピーだけが独り歩きした結果、2026年の今、全国のリビングで“窒息した高級機”が悲鳴を上げている。