脳を栄養する動脈は、大きく分けて前方の「内頸動脈系」と後方の「椎骨・脳底動脈系」の2大ルートから頭蓋内へ送り込まれます。ウィリス動脈輪の解剖生理学・構造図解を俯瞰すると、両者が脳底部(トルコ鞍の周囲、視交叉や視床下部を取り囲む位置)で合流し、七角形(あるいは六角形)の輪を形成していることが確認できます。
血流ルートの連続性を追うと、心臓から送られた血液は左右の内頸動脈を経て前大脳動脈(ACA)と中大脳動脈(MCA)へと分かれます。この左右の前大脳動脈をつなぐ短い橋渡しが前交通動脈(Acom)です。一方、首の後ろを通る左右の椎骨動脈は合流して一本の脳底動脈(BA)となり、頭頂側で左右の後大脳動脈(PCA)へ分岐します。そして、前方の内頸動脈と後方の後大脳動脈を連結するのが後交通動脈(Pcom)です。
ウィリス動脈輪の構成血管詳細まとめとして、輪を直接形作る血管は以下の5種類(計9本)に整理されます。
・前交通動脈(1本):左右の前大脳動脈を連絡
・前大脳動脈(左右2本):内頸動脈からの分岐部から前交通動脈までのA1セグメント
・内頸動脈の終末部(左右2本):前大脳動脈と中大脳動脈への分岐部
・後交通動脈(左右2本):内頸動脈と後大脳動脈を連絡
・後大脳動脈(左右2本):脳底動脈からの分岐部から後交通動脈合流部までのP1セグメント
ここで初学者が陥りやすい最大の落とし穴が「中大脳動脈(MCA)や脳底動脈(BA)自体は動脈輪の輪郭に含まれない」という点です。中大脳動脈は内頸動脈の直接の延長として外側へ走行するため、環状の輪そのものからは外れます。この前大脳動脈と後大脳動脈の血流ルートが交通動脈を介して環状につながる構造こそが、局所の血圧変動や閉塞に対する完璧な相互補完システムを作り上げています。