子宮頸がんワクチンを取り巻く議論には、今なお科学的事実と異なる数々の誤解や盲点が存在します。ネット上の断片的な情報に惑わされないためにも、以下の盲点を正確に把握しておく必要があります。
①「性交渉の経験がなければ打つ必要はない」という誤解
HPVワクチンは、性交渉を経験する前の「初交礼前(10代前半〜半ば)」に接種することで最大の予防効果を発揮します。感染後にワクチンを打ってもウイルスを排除する治療効果はありません。将来のパートナーとの接触に備え、抗体をあらかじめ作っておく予防医学の基本原則が、誤った性倫理観によって歪められて理解されるケースが後を絶ちません。
②「検診さえ受けていればワクチンは不要」という盲点
子宮頸がん検診(細胞診)は「できた前がん病変やがんを早期発見する」ための手段であり、感染そのものを防ぐ「予防」ではありません。検診で高度異形成が見つかった場合、子宮頸部円錐切除術が必要となり、将来の妊娠時に早産や流産のリスクが高まります。検診とワクチンの「両輪」が揃って初めて、子宮頸がんによる不妊や死亡をゼロに近づけることができます。
③「女子だけのワクチンである」という遅れた認識
世界保健機関(WHO)や欧米主要国では、HPVワクチンは男女双方に接種することが常識です。HPVは子宮頸がんだけでなく、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、尖圭コンジローマの原因にもなります。日本国内でも2020年に4価ワクチンが男性への適応を取得し、全国の市区町村で「男子への接種費用全額助成」を実施する自治体が急速に拡大しています。医師家庭では娘のみならず、息子に対しても公費や自費を活用して接種を受けさせる親が急増しています。