新幹線の中の喫煙所はなぜ消えた?全廃の真相と跡地の現在を総力取材

新幹線の中の喫煙所はなぜ消えた?全廃の真相と跡地の現在を総力取材

新幹線の中の喫煙所はなぜ消えた?全廃の真相と跡地の現在を総力取材についての真相をお届けします。

かつて長距離移動のオアシスとも呼ばれた車内喫煙スペース。新幹線の喫煙所がなくなった経緯を振り返ると、突発的な決定ではなく、時代の要請と鉄道インフラが直面した現実的な課題が幾重にも重なった結果であることが分かります。鉄道関係者への取材や発表資料から浮き彫りになった決定的な理由は主に3点あります。

第1の要因は、健康志向の高まりと法規制の強化です。2020年4月に全面施行された改正健康増進法により、公共交通機関における望まない受動喫煙の防止が義務付けられました。成人喫煙率の低下が続く中、乗降扉付近に設置された喫煙ルームのドア開閉時に漏れ出る煙や衣服に付着する臭気に対して、非喫煙者から改善を求める声が年々増加していました。新幹線の全席禁煙が進んだ理由の根底には、快適な車内環境を求める利用客全体の意識変化があります。

第2の要因は、車両の運用効率と設備維持コストです。喫煙ルームには強力な換気装置や脱臭フィルターが備えられていましたが、ヤニによる機器の劣化や清掃にかかる作業負担は看過できない規模に達していました。限られた車体スペースを喫煙者専用として維持し続けることへの経営判断が、コロナ禍を経た移動需要の変化によって一段と加速したと言えます。

そして第3の、最も現実的で決定打となった理由が「大規模災害への即応体制強化」です。後述するように、近年の線状降水帯による豪雨や大雪、大規模地震によって、新幹線が駅間やトンネル内に長時間立ち往生する事案が度々発生しました。乗客の命と安全を守る備品をどこに保管するのかという切迫した課題が、喫煙ルームの廃止を決定づけるラストピースとなりました。

斉藤 蓮
著者

斉藤 蓮

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。