地域住民の間で最も頻繁に見られる誤解が、「救急車だけでなく消防車までサイレンを鳴らしてやってきたから、近所で大火事や爆発が起きたに違いない」という思い込みです。現場に居合わせた住民がSNSに「消防車が急行中、どこかで火災か」と書き込み、それが拡散されて根拠のない憶測を呼ぶケースが後を絶ちません。
この現象の正体は、先述の「PA連携(赤救事案)」です。救急車(Ambulance)と消防ポンプ車(Pumper)の頭文字を取ったこのシステムは、救急要請を受けた現場へ直近の消防隊を同時に出動させる運用を指します。
東近江行政組合消防本部がこの連携を強化している背景には、明確な医学的根拠が存在します。心疾患などによる心肺停止事案では、1分処置が遅れるごとに救命率が急激に低下します。管内の救急隊が別の事案で出動中であったり、遠方の分署から向かわざるを得ない場合、近くの消防署・出張所にいる消防隊がAEDや気道確保器具を積載したポンプ車で現場へ先着し、救命処置を開始します。また、傷病者の体格が大きく階段の昇降が困難な場合や、交通量の激しい交差点で隊員の安全を確保しながら処置を行う場合にも、消防隊の人的パワーが不可欠となります。
消防車がサイレンを鳴らして走っているからといって、必ずしも火災が発生しているわけではありません。「命を救うための時間短縮と現場安全の確保」を目的に、消防隊が救急の最前線に駆けつけているという事実を正しく認識することが肝要です。