大根を鍋料理に使う際、料理初心者が最も不安視するのが「下茹でをしないと火が通らないのではないか」「独特の辛味やアクがスープを邪魔するのではないか」という疑問です。しかし、結論から言えば下茹では一切不要です。
通常のおでんや煮物で下茹でが必要な理由は、厚切り大根の細胞壁を破壊して内部まで味を染み込ませるためです。ミルフィーユ鍋では、あらかじめ大根を2〜3mmという極薄にスライスしているため、熱伝導の距離が極めて短く、加熱開始から短時間で細胞組織が軟化します。
さらに、大根に含まれる酵素や辛味成分(イソチオシアネート)は熱に弱く、沸騰したスープの中で豚肉の脂と絡み合いながら速やかに甘味成分へと変質します。むしろ下茹でを省くことで、大根特有のみずみずしい水分と水溶性のビタミン類が逃げ出さず、すべてスープの中へと濃縮されるメリットがあります。手抜きではなく、調理工学に基づいた合理的な工程短縮です。