松方弘樹さんの命を奪った直接の死因は、原発性中枢神経系悪性リンパ腫(一般的に「脳リンパ腫」と呼ばれる病気)です。この疾患は、脳や脊髄などの防壁に守られた中枢神経系組織そのものにリンパ腫が発生する極めて珍しい悪性腫瘍で、脳腫瘍全体のわずか2〜4%程度しか占めない希少がんに分類されます。
異変が表面化したのは2016年2月上旬のことでした。当時、コンサートや舞台出演を控え精力的に活動していた松方さんですが、突如として激しい頭痛と手足のしびれ、さらには「言葉がスムーズに出てこない(構音障害)」という脳梗塞に似た症状を訴えました。関係者によると、当初は過労や軽度の脳梗塞が疑われ、都内の大学病院(順天堂大学医学部附属順天堂医院など高度急性期医療機関)へ緊急搬送され、精密検査を受けたところ、脳内に複数の腫瘍病変が発見されたのです。
脳リンパ腫の初期症状は、発生する脳の部位によって劇的に異なります。松方さんの場合、前頭葉から運動野近傍に病変が広がっていたため、身体の自由が利かなくなる運動麻痺や言語障害が急速に進行しました。この病気は一般的な脳腫瘍と異なり、腫瘍組織が脳実質内にびまん性(境界が不明瞭に染み込むよう)に広がる性質を持つため、物理的な外科手術で腫瘍だけを全摘出することが極めて困難という残酷な特徴を持っています。