多くの視聴者が抱く最大の疑問は、「沢尻エリカ主演のドラマ版と、大西麻恵主演の映画版は何が異なるのか」という点に集約されます。同じ原作手記をもとにしながらも、映画版(2005年2月公開、岡村力監督)とドラマ版(2005年10月期放送、フジテレビ系)では、制作思想と脚本のアプローチが根本から異なっています。
最も決定的な差異は、「フィクションの導入度合い」です。ドラマ版では主人公の名前が「池内亜也」に変更され、錦戸亮が演じる同級生・麻生遥斗という架空のキャラクターが配置されました。思春期の淡い恋愛や学園ドラマとしてのエンターテインメント性を高める演出が施された一方、映画版は主人公の表記も実話通りの「木藤亜也」であり、彼女が実際に通った学校や養護学校での日々と、家族の支えを淡々と、しかし圧倒的なリアリティで映し出しています。
映画版のトーンは全体として「抑制された演出」に貫かれています。過剰な劇伴で観客の涙を無理に誘うのではなく、徐々に自由を失っていく身体、歩行の乱れ、不明瞭になる発語といった病状の進行を、カメラが静止した構図で長回し撮影しています。これが、映画通や福祉・医療関係者から「教科書のように正確で誠実な映画」と称賛される所以です。