日本国内におけるオストメイトの総数は約20万人以上と推計されています。決して珍しい存在ではないものの、排泄に関わるデリケートな問題であるがゆえに、当事者が孤独感を抱えやすい側面がありました。そうした社会の空気感を大きく変えたのが、第一線で活躍する著名人たちによる勇気ある告白です。
桑野信義(タレント・ミュージシャン)|直腸がんからの復活とストーマ閉鎖への道のり
ラッツ&スターのメンバーとして知られる「クワマン」こと桑野信義さんは、2026年秋にステージ3bの直腸がんを宣告されました。抗がん剤治療と放射線治療を経て、2026年春にがんの切除とともに一時的人工肛門(ストーマ)を造設する大手術を受けています。
自身のオフィシャルブログや情報番組で、桑野さんはストーマパウチ(排泄物をためる袋)を装着した生活の戸惑いや、便漏れへの不安、家族の献身的な支えを赤裸々に告白しました。その後、術後の経過が極めて良好であったことから2026年にストーマ閉鎖手術を受け、人工肛門から自力排泄へと戻るプロセスを経験。2026年現在もトランペット演奏やライブ活動、講演活動に精力的に取り組み、がんサバイバーの象徴として多くの患者に勇気を与え続けています。
渡哲也(俳優・故人)|昭和の大スターが選んだ誇り高き告白
昭和から平成の日本映画・テレビ界を牽引した名優・渡哲也さんは、1991年に直腸がんの手術を受け、永久人工肛門を造設しました。アクションシーンの多い現場において、装具を付けながら激しい撮影をこなすことは並大抵の苦労ではありませんでした。
当初は病状の詳細を伏せていましたが、後に手記や会見でオストメイトであることを正式に公表。日本オストミー協会の活動にも深い理解を示し、「同じ病気に苦しむ人たちの励みになれば」という強い信念のもと、障害を抱えながらも男らしさと気品を保ち続けた姿は、多くの人々の偏見を打ち破る決定打となりました。
団鬼六(作家・故人)|文学として昇華したパウチ生活のユーモア
官能小説の大家として知られた作家の団鬼六さんは、直腸がんの手術により人工肛門を造設。その体験を自著『人工肛門の快楽』やエッセイ『生きてりゃいいさ』の中で、包み隠さずユーモラスに描き切りました。「排泄のコントロールを失うことの悲哀」を直視しながらも、それを笑いと生の肯定へと転換させた筆致は、医療関係者からも高く評価されています。
内海桂子(漫才師・故人)&鳥越俊太郎(ジャーナリスト)
漫才界のレジェンドであった内海桂子師匠は、大腸がんの手術を経てオストメイトとなった後も、90歳を超えてなお舞台に立ち続けました。また、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんも大腸がんの手術において一時的ストーマを経験しており、メディアの現場で自らの体験を語り、がん検診の大切さと早期発見の意義を訴え続けています。