みーやんという存在が読者の記憶に強烈に焼き付いた決定打は、1991年に刊行され社会現象となった大ベストセラー『もものかんづめ』、そして翌年の『さるのこしかけ』に収録された数々の珍道中です。
なかでも『さるのこしかけ』に描かれた伝説のインド旅行エピソードは、日本のエッセイ史に残る傑作として語り継がれています。神秘と混沌の国インドへ降り立った二人は、激しい下痢に見舞われながらガンジス川のほとりをさまよい、現地の強引な客引きや怪しい土産物屋と丁々発止の攻防を繰り広げました。体調を崩してボロボロになりながらも、目の前で起きる理不尽なトラブルをお互いに「最高のネタ」として面白がり、腹を抱えて笑い転げる二人の姿は、多くの読者を爆笑させました。
さくら氏は作中でみーやんを容赦なくイジり倒していますが、その筆致の根底には「この人となら泥水をすすっても笑っていられる」という絶対的な信頼と心理的安心感が横たわっていました。人間関係において、最も無防備で格好悪い瞬間を共有できる相手は人生で何人出会えるでしょうか。さくらももこ氏にとって宮永氏は、世間のプレッシャーや多忙を極める執筆生活から完全に解放され、ありのままの「素の自分」に戻れる貴重な安全基地だったのです。