埼玉県立がんセンターについて調べる際、検索候補や過去の報道で「医療事故」という不穏な言葉を目にし、受診を躊躇する方も少なくありません。ジャーナリズムの観点からも、この経緯を正確に振り返り、現在の安全水準を客観視することは極めて重要です。
同センターでは新病院移転前後の2010年代前半、腹腔鏡下手術における死亡事例や薬剤投与ミス、合併症への対応遅れに起因する重大インシデントが複数件重なり、県民やメディアから厳しい批判を浴びた過去があります。第三者委員会による調査や外部監査において、当時の組織的な安全意識の形骸化や情報共有の不足が厳しく指弾されました。
この痛恨の反省を受け、同院は組織体制の抜本的改革を実行しました。独立した「医療安全管理部門」の機能強化、高難度新規医療技術の導入プロセスの厳正化、インシデント事例を些細な段階で吸い上げる「ヒヤリ・ハット報告」の全職員義務付け、さらに公益財団法人日本医療機能評価機構による第三者評価認定の継続取得など、二重三重の安全チェックプロトコルを敷致しています。現在の同センターは、過去の失敗と真摯に向き合い、全国でも極めて厳格なリスクマネジメントを運用している病院の一つといえます。過去の報道という「点の情報」に過度にとらわれるのではなく、その後の10年以上に及ぶ安全管理体制の再構築という「線の事実」を把握することが重要です。