このドリフ分裂劇において、最も人間臭く、感動的なエピソードとして残されているのが加藤茶氏との絆です。
実は1964年の集団脱退時、加藤茶氏も小野氏と行動を共にし、新グループへ合流する約束を交わしていました。小野氏にとって加藤氏は弟分であり、最も息の合う相棒だったからです。しかし、いかりや氏の必死の慰留や事務所上層部の説得により、加藤氏は土壇場でドリフターズへの残留を決断します。
裏切りとも取られかねない劇的な展開でしたが、小野氏は加藤氏の立場を深く理解し、決して彼を責めることはありませんでした。むしろ「カトちゃんはドリフに残って正解だった。あいつの才能はいかりやさんの下でこそ満開になった」と後年に振り返るほど、その友情は一貫して純粋なものでした。
その後も2人はプライベートで頻繁に麻雀を囲み、家族ぐるみで交友を重ねました。2012年の小野氏の葬儀・告別式において、加藤茶氏が涙ながらに読み上げた弔辞は、参列者の涙を誘いました。
「ヤスシ、お前、何で先に逝っちゃったんだよ……。そっちに行ったら、また昔みたいに朝までマージャンやろうな」
グループの分裂という過酷なビジネスの壁を越え、半世紀にわたって紡がれた2人の男の友情は、損得勘定が先行しがちな芸能界において奇跡的な輝きを放ち続けています。