第48回(最終回)「龍の魂」は、大河ドラマ史上最も美しく、そして最も過酷なラストシーンとして視聴者の記憶に刻まれています。慶応3年11月15日、京都・近江屋。大政奉還を成し遂げ、新しい日本の夜明けを夢見ながら盟友・中岡慎太郎(上川隆也)と軍鶏鍋を待つ龍馬に、暗殺者の凶刃が迫ります。
この暗殺シーンの緊迫感と殺陣の生々しさは圧巻でした。従来の時代劇にありがちな様式美を完全に捨て去り、狭い座敷の中で障子が破れ、血煙が立ち込めるなか、息も絶え絶えになりながら最後まで生きる執念を見せる龍馬。自らの血で障子に龍を描くかのように倒れ込む演出、そして静かに回る風車の描写は、ひとつの時代が終わりを告げた瞬間を痛烈に描き切りました。
しかし、この歴史的名シーンの初放送時(2010年11月28日)、前代未聞のアクシデントが発生します。まさに龍馬が斬りつけられ、命の炎を燃やし尽くそうとする最中、画面上部に「愛媛県知事選の当選確実」を告げる白文字のニュース速報テロップが大きく表示されたのです。この瞬間、NHKには視聴者からの抗議電話が殺到し、ネット掲示板やSNSでは「感動が台無しになった」「なぜこのタイミングなのか」と大炎上する事態となりました。
この事件は「テロップ事件」として語り継がれることになりますが、のちに放送された総集編や、現行のNHKオンデマンド配信、ブルーレイBOXに収録されている映像では、当然ながら該当のテロップは綺麗に除去されています。現在全編を見返す視聴者は、大友演出が本来意図していた完璧な静寂と緊迫感の中で、龍馬の最期を見届けることができます。