犬の行動パターンは、何世代にもわたって培われた作業目的によって決定づけられます。サモエドとグレートピレニーズの性格の違いを理解する鍵は、それぞれの原産地と歴史的役割にあります。
シベリアの遊牧民族サモエド族とともにテントで寝起きし、トナカイの放牧やそり引きを担ってきたサモエドは、極めて社交的で人懐っこい気質を持っています。人間を暖め合う仲間として認識してきたため、攻撃性が極めて低く、初対面の人や他の犬に対しても友好的です。反面、強い孤独感を嫌う傾向があり、長時間の留守番が続くと「分離不安」を起こして激しく吠えたり、家具を破壊したりするトラブルに発展しやすい繊細さを持ち合わせています。
これに対し、ピレネー山脈の険しい高山地帯で羊の群れをオオカミやクマから守る「家畜護衛犬(Livestock Guardian)」として生きてきたグレートピレニーズは、卓越した自立心と防衛本能を宿しています。人間の指示を待つのではなく、自らの判断で脅威を排除する役割を担ってきたため、独立心が強く、頑固な一面を持ちます。
家族に対しては極めて寛大で愛情深く、小さな子どもを守る「乳母」のような慈愛を見せますが、見知らぬ侵入者や縄張りに近づく他者に対しては、警戒アラートとして深い吠え声を上げます。ドッグトレーナーへの取材でも、「ピレニーズはサモエドのように『誰にでも愛想を振りまく』犬ではない。毅然としたリーダーシップを示せなければ、飼育難易度は跳ね上がる」と証言されています。