『3月のライオン』が生み出した熱量は、出版物の枠を遥かに超えて広がっていった。
名門アニメ制作会社シャフトと新房昭之監督の手によってNHK総合で放送されたアニメシリーズは、原作が持つ詩情と痛切な人間賛歌を映像美で見事に昇華させた。さらに実写映画版では、主演の神木隆之介が主人公・桐山零の抱える脆さと芯の強さを体現し、興行的にも批評的にも大きな成功を収めた。これらの映像化作品がNetflixなどで世界中に配信されたことで、彼女の描く人間ドラマは国境を越えて愛される普遍性を獲得する。メディアミックスの渦中にあっても羽海野チカは制作陣と真摯に対話し、自身の物語に込められた魂を頑なに守り続けた。