鰆という魚の取り扱いには、水産業界の人間しか知らないシビアな裏事情が存在する。豊洲市場の仲卸関係者は次のように明かす。
「サワラは『身割れ』しやすい魚の代表格。身が非常に柔らかく水分が多いため、水揚げ時のショックや船上での扱いが悪いと、肉割れを起こして商品価値が半減してしまう。だからこそ、丁寧に活け締めや神経締めを施された一本釣りのサワラは、キロ単価が一気に跳ね上がる」
近年ではルアーフィッシングの好ターゲットとして東京湾や伊勢湾、日本海側でサワラキャスティングが大流行しているが、アングラー(釣り人)の間でも「釣り上げてから10分以内の血抜きと保冷で、味が天と地ほど変わる」というのが共通認識だ。
さらに、ネット上で長年議論されているのが「サワラは白身魚か、赤身魚か」という問題だ。切り身を見ると透き通るような白、あるいは淡いピンク色をしているため、消費者の9割は白身魚だと思い込んでいる。しかし、学術的な生化学分類において鰆は完全な「赤身魚」である。
サバ科に属する鰆は回遊魚であり、筋肉中に持久力を維持するためのヘモグロビンやミオグロビンといった色素タンパク質を一定量保持している。基準値(筋肉100gあたり色素タンパク質10mg以上)に照らし合わせると赤身魚に該当するのだが、他のサバやマグロに比べると含有量が絶妙に少ないため、肉眼では白身に見えるという極めてユニークな性質を持っているのだ。