完全肉食動物である猫にとって、動物性たんぱく質は必須アミノ酸であるタウリンやアルギニンを摂取するための生命線です。しかし、野生のイメージから「生肉や生魚の方が健康的」と盲信するアプローチには、極めて深刻な感染症リスクが潜んでいます。
安全な猫が食べられる肉と魚の調理法の基本原則は、徹底した「中心部までの加熱調理」と「味付け・調味料の完全排除」です。鶏ささみや鶏むね肉は脂質が低く最良のたんぱく源ですが、生の状態ではサルモネラ菌やカンピロバクターによる細菌性腸炎、さらにはトキソプラズマ感染症の温床となります。魚類に関しては、生のアジ、イワシ、サバなどの青魚に多く含まれる酵素チアミナーゼがビタミンB1を破壊し、歩行困難やけいれんを招く「チアミン欠乏症」を引き起こす恐れがあります。白身魚(タラ、タイなど)やサケを中心に、骨を完全に取り除いた上で茹でるか蒸す工程が不可欠です。
また、猫が好むイメージの強い乳製品ですが、猫が食べられるチーズや乳製品の注意点を知らずに与えるのは危険です。成猫の大部分は、母乳から離乳する過程で乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」の活性が著しく低下する乳糖不耐症を抱えています。人間用の牛乳をそのまま与えれば、激しい浸透圧性下痢を引き起こします。乳製品を取り入れる際は、製造工程で乳糖がほとんど除去されているカッテージチーズやプレーンヨーグルト、あるいはペット専用の脱乳糖ミルクをティースプーン半分程度に留め、リンやナトリウムの過剰摂取を防がなければなりません。