万が一、生牡蠣を食べた後に激しい嘔吐や下痢に見舞われた場合、パニックに陥って間違った自己判断を下すと容態を深刻化させます。医療現場で推奨される正しい初動対処法を頭に叩き込んでおく必要があります。
1. 市販の下痢止め(止瀉薬)を絶対に飲まない
激しい下痢に耐えかねて、ロペラミド塩酸塩などの強力な下痢止め薬を服用することは医学的に極めて危険な行為です。下痢や嘔吐は、体内に侵入した大量のノロウイルスを体外へ物理的に排出しようとする生体防御反応です。薬で腸管の蠕動運動を無理やり止めてしまうと、ウイルスや産生された毒素が腸内に滞留し、腸粘膜の壊死や中毒性巨大結腸症、重症の全身感染症へと発展する恐れがあります。整腸剤(ビオフェルミン等)の服用は問題ありませんが、ウイルス排出を阻害する下痢止めは医師の慎重な指示がない限り服用してはなりません。
2. 経口補水液(ORS)による徹底した脱水対策
嘔吐と水様下痢の連続によって、体内からは水分のみならずナトリウムやカリウムといった生命維持に必要な電解質が急速に失われます。真水やお茶を大量に飲むと血中の塩分濃度がさらに薄まり、かえって水中毒や筋痙攣を引き起こすため、必ず経口補水液(OS-1など)を摂取してください。 ポイントは、吐き気が強い時期に一気に飲み干さないことです。胃が刺激されて反射的な嘔吐を誘発するため、スプーン1杯(10〜15ml程度)を5分おきに口に含み、粘膜から少しずつ浸透させるように補給するのが医学的に正しいプロトコルです。
3. 次亜塩素酸ナトリウムを用いた二次感染の完全封じ込め
ノロウイルス食中毒の恐ろしさは、本人の苦痛だけに留まりません。患者の便1g中には数億個、吐瀉物1g中にも100万個以上のウイルス粒子が含まれており、同居家族や職場の同僚へ猛烈な二次感染を引き起こします。市販の消毒用アルコールスプレーや除菌ウエットティッシュではウイルスを失活させることができません。
家庭用の塩素系漂白剤(ハイターなど、次亜塩素酸ナトリウム約5%濃度)を使用し、用途に合わせて消毒液を用時調製します。
- 吐瀉物や便が直接付着した床・トイレ:水1リットルに塩素系漂白剤20mlを混入(塩素濃度約1000ppm / 0.1%)。使い捨てマスクと手袋を着用し、ペーパータオルで外側から内側へ静かに拭き取った後、密閉廃棄して次亜塩素酸液で浸すように拭き上げる。
- ドアノブ、手すり、便座、水道レバー:水1リットルに塩素系漂白剤5mlを混入(塩素濃度約200ppm / 0.02%)。ペーパータオルに浸して清拭後、10分後に水拭きする(金属の腐食防止)。