モヤイ像を形作っているのは、普通の安山岩や花崗岩ではない。世界でも新島とイタリアのリパリ島周辺でしか採掘されない極めて希少な火山噴出物、「抗火石(コーガ石)」だ。主成分の8割をガラス質が占め、水に浮くほど軽く、ノコギリや斧で簡単に切削できる特殊な性質を持つ。
加工の容易さゆえに、新島では古くから住宅の外壁や塀、そしてユニークな石像作りに用いられてきた。だが都市環境においては、その多孔質な構造が仇となる。排気ガスを吸い込み、酸性雨に晒され、半世紀近い年月のなかで表面のディテールは確実に摩耗してきた。2026年現在のモヤイ像の横顔を間近で観察すると、寄贈当時の写真よりも目元や唇の輪郭が曖昧になり、まるで風化そのものが彫刻のプロセスであるかのような凄みを漂わせている。