法務省の発表資料や各地の法務局窓口の動向を見ても、一般の申請者が自ら書類を作成して登記を申請する「本人申請」の割合は高水準を維持しています。その最大の引き金となったのが、不動産登記法の改正による相続登記の義務化と罰則ルールの導入です。
現行の法制度において、不動産を取得した相続人は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。これに違反し、正当な理由がないまま放置した場合には10万円以下の過料が科される対象となります。過去に発生した未登記の相続物件についても遡及適用されるため、「長年放置していた実家の名義を急いで変えなければならない」という焦燥感が広がりました。
自力申請を選ぶ人が増えた背景には、インターネット上で申請書の雛形や解説情報が充実したことに加え、2024年3月に開始された戸籍の広域交付制度などにより、公的書類の取得負担が一定程度軽減されたことがあります。しかし、制度が簡素化されたとはいえ、登記手続きの本質は厳格な権利関係の公示です。単なる事務作業と甘く見ていると、思わぬ手戻りや親族間の摩擦に直面することになります。