カラスウリの花を特徴づけるのが、5枚の花弁の縁から無数に広がる極細の糸状構造です。一見すると装飾的に見えるこの「レース」には、夜の闇で生き抜くための決定的な機能が備わっています。
第一の理由は、月明かりや星明かりを反射させる視覚的アピールです。夜間を飛ぶスズメガは優れた視覚を持っていますが、色彩の判別が難しい暗闇では「白」が最も目立ちます。花弁の面積をそのまま広げると強風で破れたり自重で垂れ下がったりしますが、網目状のレースにすることで、最小限の植物資源で投影面積を直径7〜10cm近くまで拡大し、遠くを飛ぶガの視界に捉えさせやすくしています。
第二の理由は、誘引物質(芳香)の効率的な揮発です。レースの細い繊維一本一本から、スズメガを引き寄せる特有の甘く爽やかな芳香分子が空気中へと放散されます。表面積を爆発的に増やすことで、夜風に乗せて広範囲へ匂いのシグナルを送り届けるディフューザーの役割を果たしているのです。