ICT教育の進展に伴い、図形指導のあり方は大きな転換期を迎えています。熊本市教育センターICT支援室が作成したデジタル教材『三角柱の展開図』では、タブレット画面上で6種類の展開図を自在に3Dアニメーションとして組み立て、辺と面が吸着するプロセスを視覚的に体感できるシステムが導入されています。また、動的数学ソフトウェア「GeoGebra」を利用した空間図形のシミュレーションも、中学校数学の授業で標準的に取り入れられるようになりました。
しかし、こうした最新のデジタル環境が普及した現在でも、紙のテストになると途端にペンが止まってしまう子どもたちが後を絶ちません。大手進学教室の指導担当者や中学生の声を集約すると、つまずきの実態は極めて具体的な部分に集中しています。
数学教育系ブログを執筆するKen氏(tomo)が「三角柱はケーキのようで腹が減るが、展開図の作図は本当に厄介」とユーモアを交えて表現しているように、頭の中で立体を切り開く作業は、強い認知負荷を強います。
スイスの心理学者ジャン・ピアジェが提唱した「空間概念の発達理論」に照らし合わせると、人間は具体物を手で触って動かす段階(具体的操作期)を経て、徐々に頭の中だけで図形を3次元回転させる形式的操作期へと移行します。画面上で美しく動く3Dアニメーションを見る「受動的な学習」だけでは、自らの手で2次元の座標に落とし込む空間構成能力は十分に育ちません。実際にハサミで厚紙を切り開き、組み立てるというフィジカルな試行錯誤を経験しているかどうかが、テスト本番での見取り図・展開図への直感力に直結しています。