2026年現在、東京の高級イタリアンや話題のトラットリアでは、厨房に大きな木製作業台を新設する店が急増している。修業先として選ばれるのは、ミシュラン星付きレストランの厨房だけではない。ボローニャの街角で長年パスタを打ち続けてきた地元の熟練職人たちの元だ。
最新の厨房機器を揃えた東京のシェフたちが口を揃えて語るのは、「手作業の物理的合理性」への驚きだ。自動パスタマシンは生地に過度なストレスを与え、摩擦熱で水分を奪ってしまう。一方で、手のひらの体温と木棒の圧力だけで薄く伸ばされた生地は、しなやかさを保ったまま極限の薄さに達する。本物を知る日本の食通たちが、機械製麺の生パスタではなく、職人が一針一針を縫うように仕込んだ本物の手打ちパスタを求めて予約を埋めているのだ。