数ある自重種目の中で、なぜこれほどまでにディップスが神聖視されるのか。その秘密は、通常のプッシュアップやベンチプレスではアプローチしにくい下方向へのプッシュ動作(肩関節の伸展および内転)にある。上体を前傾30度ほどに倒し、肘を外側へ張り気味に深く沈み込むことで、大胸筋下部の筋繊維が極限まで引き伸ばされ、強烈なエキセントリック収縮(伸張性収縮)が誘発される。これこそが、立体的なアンダーバストラインを形成する鍵だ。
対照的に、上体を垂直に立てた姿勢をキープし、脇を締めて肘を後ろへ引く軌道を取ると、負荷のベクトルは瞬時に上腕三頭筋へとシフトする。腕の太さの3分の2を占めるこの筋肉の外側頭と長頭に対し、自身の全体重という巨大な抵抗がダイレクトにのしかかる。身体の角度をわずか数センチ微調整するだけで、異なるターゲットを意のままに攻め分けられる多機能性こそ、ディップスが上半身最強の種目と呼ばれる所以である。