一着のドレスが数千万円に達する理由は、門外不出の職人技「メティエダール」の存在を抜きにしては語れない。刺繍のルサージュ、羽根細工のルマリエ、プリーツのロニョンといった老舗工房の手仕事は、まさに人間国宝級の芸術だ。数百時間、時には1000時間を超える手作業の集積が、布地を立体彫刻へと変貌させる。
当然ながら価格設定は桁外れだ。シンプルなデイウェアでも数百万円、手の込んだイブニングガウンになれば3000万円から1億円を超えることすら珍しくない。この驚異的な価格は、希少な素材費だけでなく、何世代にもわたって受け継がれてきた職人たちの技術を維持し、失われゆく手仕事を次代へ繋ぐための文化支援金としての側面も担っている。