日本の外食史において、生肉・生レバーの扱いを根底から覆した最大の転換点は、2011年4月に発生した焼肉店ユッケ食中毒事件でした。富山県、福井県、石川県、神奈川県のチェーン店「焼肉酒家えびす」で生食用ユッケ等を食べた客から次々と重症者が発生し、最終的に児童を含む5名が尊い命を落とし、有症者は180名を超える惨事となりました。
この未曾有の大惨事を受けて、厚生労働省および内閣府食品安全委員会は、生肉全般の衛生管理基準の抜本的見直しに着手しました。それまで飲食業界では「新鮮なレバーであれば生で食べても安全である」という認識が半ば常識化しており、多くの職人や消費者が鮮度こそが安全の担保であると信じ込んでいたのです。
しかし、行政が牛レバーの生食実態を徹底的に科学調査した結果、鮮度とは無関係に潜む致命的なリスクが白日の下に晒されました。その調査結果を受け、2012年7月1日、牛レバー生食禁止が厚生労働省の食品衛生法に基づく規格基準改正によって正式に施行されました。長年親しまれてきた牛レバ刺しは、この日を境に日本の飲食店のメニューから完全に姿を消すことになったのです。